日光国立公園とは
日光国立公園は、1934年に日本で最初の国立公園の一つとして誕生した長い歴史を持ちます。栃木、福島、群馬の三県にまたがる広大な面積を持つ国立公園で、大きく西は日光エリア、東は那須エリアに分かれており、那須火山帯に属する火山群と、火山活動の影響で生まれた温泉、湖沼、瀑布など、水と自然に恵まれた公園です。古くから人と自然が共存してきたため、人の生活圏のすぐ傍に大自然があり、町並から一気に山が迫ってくるダイナミックな光景は日光国立公園ならではといえるでしょう。
日光国立公園は、鉄道や新幹線、高速道路、直通の高速バス等を用いて都心から約2時間でアクセス可能な立地にあるため、手軽に自然や歴史文化に親しむことができる国立公園として非常に人気があります。
奥日光地域とは
奥日光地域は、栃木県北西部の群馬県との境界部に位置し、いろは坂と金精峠に挟まれた、広大な日光市の中でも標高の高い場所です。
日光いろは坂をあがりきると、日光中宮祠があり、その南に中禅寺湖の湖面が広がります。
北東には優美な円錐形の山体を持つ男体山と、さらにその北東に女峰山、赤薙山がそびえます。中禅寺湖の西側には、千手ヶ浜が広がり、北では東西に伸びる高山の山稜を境にして、その北に戦場ヶ原や小田代原が広がります。
また、戦場ヶ原の北部には、湯ノ湖、切込湖、刈込湖などが分布しています。
これら日光いろは坂の上の地域を「奥日光」と総称しています。
奥日光地域のみどころ
男体山(なんたいさん)
日光連山を代表する標高2,486メートルの山で、中禅寺湖の北岸にそびえ、雄大な姿を見せています。山自体が信仰の対象で、山頂には日光二荒山神社の奥宮があります。二荒山(ふたらさん)とも呼ばれ、「ふたら」とは観音浄土の補陀洛(ふだらく)からきているといわれています。また、男体山のふもとに広がる中禅寺湖や華厳滝・竜頭滝、草原や湿原などは、男体山の噴火活動によりできたものです。
中禅寺湖(ちゅうぜんじこ)
奥日光の入り口に位置する中禅寺湖は、周囲約25キロメートル、最大水深163メートルで、およそ2万年前に男体山の噴火による溶岩で渓谷がせき止められ、原形ができたといわれています。湖面の標高は1,269mで、水面標高が日本一高い湖です。
戦場ヶ原(せんじょうがはら)
400ヘクタールの広大な面積を誇る日本有数の湿原で、この地が中禅寺湖をめぐって男体山の神と赤城山の神とが争った「戦場」だった、という神話がその名称の由来といわれます。湿原をぐるりと囲むように自然探究路が整備され、男体山を背景に広大な湿原を見渡せる展望ポイントが各所に設置されていますので、変化に富んだ壮大な自然を体感することができます。この戦場ヶ原に湯ノ湖、湯川、小田代原を加えた260.41ヘクタールが「奥日光の湿原」として2005年、ラムサール条約湿地に登録されました。
小田代原(おだしろがはら)
湯ノ湖から流れる湯川の西側に広がる周囲2キロの草原で、戦場ヶ原と隣接していますが、面積は戦場ヶ原の約4分の1ほど。ミズナラの林に囲まれた大自然が広がります。初夏から夏にかけてはウマノアシガタ(6月〜7月)、ホザキシモツケ(7月〜8月)、ニッコウアザミ(7月〜8月)の群落に、秋にはミズナラの黄葉や草紅葉の美しい光景に出合うことができます。また、草原の真ん中に生えている1本のシラカンバの木は、「小田代原の貴婦人」と呼ばれ、人気の写真スポットとなっています。
湯ノ湖(ゆのこ)
三ツ岳の噴火で湯川がせき止められてできた湖で、周囲は約3キロメートル、三方を山で囲まれ、神秘的な雰囲気が漂います。湖畔には散策路が整備され、1時間ほどで一周できます。
湯滝(ゆだき)
湯ノ湖の南端にある高さ70メートル、長さ110メートルの滝で、湯川をせき止めて湯ノ湖をつくった三ツ岳溶岩流でできた岩壁を湖水が流れ落ちる姿は迫力があります。湯滝を流れ落ちた水は、戦場ヶ原を流れる湯川となり、竜頭滝を下って中禅寺湖へ流入します。
竜頭滝(りゅうずのたき)
男体山の噴火によってできた幅10メートルほどの階段状の溶岩の上を210メートルにわたって流れ落ちる渓流爆。滝つぼ近くが大きな岩によって二分され、その様子が竜の頭に似ていることからこの名がついたといわれています。また、10月上旬ごろからはからは紅葉の名所として人気が高く、モミジやシナノキなどに彩られた美しい景観が楽しめます。
千手ヶ浜(せんじゅがはま)
中禅寺湖の西の端にある、南北2キロメートルにわたる浜。かつて日光開山の祖、勝道上人が建てたという千手観音堂がありました。陸路では、一般車の乗り入れが禁止されている日光市道1002号線でのみアクセスでき、樹齢200年以上のミズナラやハルニレなどが林をつくる自然豊かな環境です。徒歩および自転車のほか、季節により低公害バスで訪れることができます。初夏(例年6月)にはクリンソウが可憐に咲き誇り、多くの方で賑わいます。
英国大使館別荘記念公園
英国の外交官として、明治維新に大きな影響を与えたアーネスト・サトウが1896年(明治29年)、中禅寺湖畔の南岸に建てた山荘が、後に英国大使館別荘となり、2008年(平成20年)まで利用されていたものが、栃木県へ寄贈され、「英国大使館別荘記念公園」として2016年より公開。奥日光の国際避暑地としての歴史や英国文化についての展示を行っています。また、館内では紅茶やお菓子などが楽しめる(別途料金)ほか、2階の広縁からは、サトウが愛した中禅寺湖畔の「絵に描いたような風景」を満喫できるなど、旧大使館別荘として使われていた時代の雰囲気を感じることができます。
イタリア大使館別荘記念公園
明治中頃から昭和初期にかけての中禅寺湖畔は、各国の大使館をはじめ多くの外国人別荘が建てられ、国際避暑地として発展しました。園内の建物は、1928年(昭和3年)にイタリア大使館の別荘として建てられ、1997年(平成9年)まで歴代の大使が使用していたものです。「本邸」は、床板や建具・家具などをできる限り再利用して復元し、副邸は、往時の歴史を紹介する「国際避暑地歴史館」として整備しています。また、園内からは表情豊かな中禅寺湖の風景を堪能することができます。
中禅寺湖畔ボートハウス
中禅寺湖畔ボートハウスは、国際避暑地として栄えた歴史を持つ中禅寺湖畔に、昭和22(1947)年、米国の水辺リゾート地をモデルに建設されました。建物は、当時の姿にできる限り復元したものです。1階艇庫に展示しているボートは、中禅寺湖畔にあるベルギー王国大使館別荘が所有していたものを、平成21(2009)年1月に栃木県が寄贈を受け修復したものです。館内ではコーヒーの販売もあり、中禅寺湖の美しい景色を眺めながらのコーヒータイムをお楽しみいただけます。